第3話
 カラミティ・ペア
(I/Dさんのリクエストより)

 コズミック・イラ71。
 ナチュラルとコーディネイターの間で繰り広げられた戦いは、両者を扇動していた元凶、ダブル
Gの死をもって、一応の終結を迎えた。
 だが、喜んでばかりもいられない。ナチュラルとコーディネイターの間に存在する問題は、何も
解決していないのだ。
 これから世界はどうなるのか。
 自分たちはどうすればいいのか。
 多くの人間が悩み、傷付き、それでも前に向かって歩き出そうとしていた。
 しかし、そうでない者もいた。血塗られた悲しい過去に捕らわれ、這い上がれぬ者たち。
 これは、そんな愚か者たちの物語である。



 砂漠。
 一見、生命の欠片さえ存在しない死の大地の様に見える。だが、実は意外と多くの生命が住
んでいるのだ。
 虫もいる。蛇もいる。小動物もいる。
 もちろん、人間もいる。
 砂の大地を、一台のオンボロジープが疾走している。乗っているのは、金髪の少年が一人。中
古のジープには幌も無く、強烈な向かい風が、運転席の少年の顔を直撃する。
「ちっ、嫌な風だ……」
 砂混じりの熱風が、オルガ・サブナックの頬を乾かせる。
 喉が渇き、水筒に手を伸ばすが、思い留まった。砂漠に入る前にたっぷり用意したとはいえ、
水は限られている。我慢できる内は、我慢すべきだ。
 十分後。
 岩山を見つけたオルガは、ジープを停め、岩陰で身を休める。そして、貴重な水をガブ飲み。
「っくは〜〜〜っ! やっぱ、我慢は体に良くないな!」
 水筒一つを空にして、オルガは周囲を見回す。岩と砂だけの世界。静かだ。嫌いじゃない。け
ど、好きでもない。
「長居は無用だ。こんな砂漠、さっさと出るか」
 空になった水筒を手に立ち上がったその時、空気を切り裂く音が聞こえた。直後、手にしてい
た水筒に穴が空いた
「!」
 オルガは即座にジープの陰に隠れる。腰から護身用の拳銃を取り出し、周囲を窺う。
 誰もいない。気配も無い。
 警戒しながら、オルガは水筒を見た。穴は間違いなく、銃弾に射抜かれた跡だった。大きさは
人差し指の先ほど。見事に貫通している。
 もう一度、辺りを見回すが、やはり人影は無い。今いる岩山の周囲全てが砂の大地であり、人
間が隠れるような場所も無い。となると、最低でも相手は地平線の向こうから撃ってきた事にな
る。とんでもない射撃の名手だ。神業と呼ぶべき技量の持ち主。
「……………世界は広いな。俺も射撃には自信があるけど…」
 この相手には、勝てる気がしない。
 オルガはため息をついた。オーブでの治療により、ブーステッドマンとしての力はほとんど失っ
ている。それでも、肉体的には並のナチュラルよりは優れているし、コーディネイター相手でも負
けない自信があった。だが、今、狙撃してきた相手は別次元の強さと技量を持っている。これ程
の差を見せ付けられると、恐怖と共に感嘆し、尊敬してしまう。
 ニ発目の狙撃は無かった。オルガは銃をしまい、もう一度、周囲を見回す。やはり誰もいな
い。
「俺を殺すために撃ってきたわけじゃなさそうだな」
 確かに、オルガを殺すつもりなら、最初の一発で頭を打ち抜いているはずだ。
「という事は、単なる脅しか?」
 だが、何のために?
 疑問が頭の中から湧き出てくる。そして、これ程の腕を持つ狙撃手の顔も見たくなった。
「探してみるか。急ぐ旅じゃないしな」
 オルガは水筒を貫いた銃弾が飛んできた方向を見た。そしてジープに乗り込み、走り出した。
 地平線ギリギリの所まで来ると、車のタイヤの跡があった。どうやら狙撃手は車に乗っていた
らしい。砂と風に消える前に、タイヤの跡を辿った。



 熱砂の大地を、一台のジープが走っている。
 乗っているのは二人。どちらも布で顔を隠しているが、背丈や体つきから見ると男と女、いや、
少年と少女というくらいの年齢。
 少女は口の中で飴を転がしている。一見、ごく普通の女の子だが、その小さな手にはライフル
が握られている。その銃身は少し熱く、使って間もない事が分かる。
「あんな一人旅をしてる奴まで、撃つ必要は無かったんじゃないのか?」
 少年がそう言うと、少女は感情の無い声で、
「警告です。これで彼が、私たちの町に近づく事はないでしょう。これはあの人の為でもあります」
 と、答えた。
「そりゃあまあ、今、俺たちの町は危険地帯だけどさあ、もうちょっとやり方ってものがある気が
…」
 少年が反論しようとしたその時、地面が爆発。二人の乗っているジープが、爆風と衝撃でひっく
り返った。
「なっ!?」
「……!」
 爆発の瞬間、少女は飴を噛み砕き、ジープから素早く飛び降りた。が、少年はジープから放り
出され、砂の中に倒れる。
「ヒュロス!」
「だ、大丈夫だ。それより一体、何が起きたんだ?」
「地雷みたいですね。町の近くにこんな物が仕掛けるなんて……」
 少女が言い終わる前に、銃声が鳴り響く。マシンガンの一斉掃射だ。
「!」
 少女は少年を連れて、ジープの陰に隠れる。無数の銃弾は全てジープによって跳ね返される
が、敵は半端な数ではない。ジープの陰から視覚できるだけでも、十人以上はいる。
 少女はライフルで応戦するが、狙撃用の銃では多数の敵に応戦できない。一人、二人と倒す
が銃撃はますます激しくなる。
「敵が多すぎる……。このままでは……」
 少女はこの状況を打開するため、思考を通常以上に働かせた。しかし、少女が結論を出す前
に事態は変化した。
 襲撃者たちの背後で、爆煙が上がる。二発、三発、四発。
「!」
「な、何だ?」
 驚く少女とヒュロスの耳に、
「おらおらおらおらーーーーっ!」
 と叫ぶ、勇ましい声が飛び込んできた。そして二人の眼には、小型バズーカを両手に持って撃
ちまくるオルガ・サブナックの姿が飛び込んできた。
 結局、襲撃者たちは予想外の敵の出現に慌てふためき、逃げていった。得意顔のオルガはヒ
ュロスたちに近づき、挨拶する。
「よお、無事だったか? それにしても…」
 オルガはライフルを持つ少女の方を見た。布で顔を隠しながらも、その眼光は鋭く、警戒心を
隠そうとしない。また、その身には一分の隙も無く、只者で無い事が分かる。
「なるほど。さっき俺を撃ってきたのは、そっちのお嬢ちゃんか」
「………………」
「そんなに警戒するなよ。あれほどの腕のスナイパーがどんな奴か、興味が沸いただけだ。顔さ
え見れば、さっさと帰るよ」
「……そうですか。では」
 少女は、顔の布を取り去った。現われたのは、あどけない顔をした、ごく普通の女の子。しか
し、その眼光の鋭さは、とても普通の女の子とは思えない。
「これで満足しましたか?」
「一応な。ああ、名前も教えてくれないか?」
「構いませんが、なぜですか?」
「人間の顔は、名前とセットで覚えることにしているんだ。その方が覚えやすいんでね。」
「私に名前はありません。名前を付けてくれる者がいなかったので。ですが、それでは不便なの
で、自分でギアボルトと名付けました。どうぞ、よろしく」
 そう言って、少女は軽く頭を下げた。



 この砂漠は、決して砂だけの世界ではない。岩山もあれば、水の湧き出るオアシスもある。
 そしてこの砂漠の中でも最大級のオアシスには、自然と人が集り、町を作り上げた。長い歴史
を誇るこの町は、砂漠の中継地点として栄え、賑わっていた。乾いた砂の大地の中にあって、こ
こは別天地だった。
 オルガはヒュロスとギアボルトに連れられ、この町にやって来た。命の恩人であるオルガをヒュ
ロスは歓迎し、彼の父である町長もオルガに感謝した。
 町長の家では、オルガの為に盛大な宴が催された。大勢の人たちが集まり、飲めや歌えやの
大騒ぎ。こういうバカ騒ぎは、オルガはあまり好きではないのだが、祭りを止めるほど無粋では
ない。皆と一緒に飲んで、食べて、それなりに楽しんだ。
 宴席の中で、オルガは町長からこの町の事情を聞いた。砂漠の中継地として栄えてきたこの
町は、先の戦争でも重要な拠点とされ、地球軍の管轄下に置かれていた。戦争が終わった後、
地球軍は引き上げたのだが、代わりに困った連中が町の周囲に住み着いた。
 ザフトの残党である。
 先の戦争の末期、宇宙での決戦に備えて、ザフトはその戦力の大半を地球から引き上げさせ
た。その一方で、決戦後の地球再侵攻のため、一部の戦力を地上に留めたのである。
 だが、先の戦争は思わぬ形で終結。そして、ディプレクターやプラント新政権の手によってザフ
トは解隊された。
 ディプレクターや地球の各政府は、ザフトの残存兵に武装解除を呼びかけた。ほとんどの者が
それに応じたが、拒絶する者もいた。パトリック・ザラの部下や、彼を支持していたコーディネイタ
ー至上主義者たちである。彼らはナチュラルとの共存を訴えるラクスやプラント新政権を批判
し、地下に潜伏。新たなるザフト、『リ・ザフト』を名乗り、地球軍との徹底抗戦を宣言した。
 この町の近くにいるザフト兵もリ・ザフト同様、武装解除をせず、この町を狙っているのだとい
う。貿易の拠点であるこの町には、物資や食料、金品が多く集まっている。連中はそれらを手に
入れ、自分たちの活動(テロ)に使うつもりなのだろう。
 対抗しようにも、地球軍は先の大戦で傷付き、再編成中だ。町では中古のモビルスーツを買い
込み、自警団を結成して対抗している。
 そして、自警団の中で最も活躍しているのが、
「よお」
「………………」
 騒がしい宴席を抜け出したオルガは、庭に一人でいるギアボルトを見つけて、挨拶した。だが
彼女は何も答えなかった。こちらを見ようともしない。
「やれやれ。無愛想な小娘だぜ」
「あなたこそ、あまり礼儀を知っているようには見えませんね。オルガ・サブナックさん」
「…………苗字を名乗った覚えは無いんだが。俺も随分と有名になったもんだ」
「ダブルGとの決戦は、世界中の人間が見ていました。もちろん私も。そして、あの戦いに参加し
たパイロットたちの事は全て調べました。容姿、性格、現在の所在に至るまで、全てを」
「ほう、大した情報網だ。だが、何のために調べた?」
「あなたたちがガーネット・バーネットの仲間だからです。それはつまり、私の敵になる可能性も
あるという事。この私の生存を知れば、あの女は必ず私を殺しに来る」
 真剣な顔でそう言うギアボルトを見て、オルガは苦笑した。
「なるほど。砂漠で俺を撃ったのは『町の近くに来た不審者』だからじゃなく、『ガーネットの仲間
であるオルガ・サブナック』だからか。そんなにあの女が怖いのか? ゴールド・ゴーストのギア
ボルトともあろう者が」
 ギアボルト。地球軍にいた頃、噂で聞いたことがある。世界最強と謡われた五人組の傭兵集
団、ゴールド・ゴーストのメンバー。だがゴールド・ゴーストはザフトに雇われ、ガーネット・バーネ
ットと戦ったが、敗北。全員死んだはずだ。もちろん、百発百中の腕を誇る天才スナイパーであ
るこの少女も。
 しかし、乗機を破壊されながらもギアボルトは生きていた。強靭な肉体と、優れた自己治癒能
力を持つ彼女ならではの奇跡だった。それでも傷は深く、この町の町長に拾われなければ、砂
漠で死んでいただろう。
 傷が完全に治り、動けるようになったのは、一月ほど前。自分を助けてくれた町長の恩に報い
るため、彼女は戦場に戻った。
 しかし、彼女は以前とは変わっていた。
「あの女を苦しめたゴールド・ゴースト唯一の生き残りである私を、放っておく筈がない。あの恐
ろしい女が……」
 ギアボルトの肩が、わずかに震えている。心底からガーネットを恐れているらしい。
『やれやれ。あの女、このお嬢ちゃんに何をしたんだ?』
 まあ、確かにガーネットは怖い。強い。敵に回せば、あれほど恐ろしい女もいないだろう。
「はっ、あの女はそんなに暇じゃねえよ。死に損ない一人のために、わざわざこんな所にまで来
るはず無えだろ」
 苦笑交じりにオルガは否定するが、ギアボルトは首を横に振る。
「いいえ、私なら来ます。そして、殺します。敵は確実に止めを刺すもの。刺さなければ、次は必
ず殺される。違いますか?」
 その問いに、オルガは少し考えた。昔の自分なら、何の疑問も抱かずに頷いただろう。だが今
は、
「そりゃあな。けど、あの女は違う。そして、ディプレクターの連中もな」
 と、苦笑いをしながら否定する。
「俺がその証拠だ。俺は昔、あいつらの敵だった。ブッ殺してやろうと本気で思ってた。けど、そ
んな俺を、俺たちを、あいつらは受け入れた」
「それは、ダブルGとの決戦のために、あなた達の力が必要だったから…」
「いや、違うな。あいつらはバカなんだよ。手を差し伸べた相手を疑おうともせずに、あっさり握手
する。そして信頼する。心の底からな。まあ、そこまで信頼されると、かえって裏切れなくなるもん
だ。で、みんなで力を合わせて、大勝利と」
 自分で言って、オルガは可笑しくなった。そんなバカ共に手を貸してたせいでクロトとシャニは
死に、自分も行き場を失った。だが、後悔はしていない。
「バカはいちいち過去の事なんて、気にしちゃいない。お前さんの事だって、生きてるって知った
ら、喜ぶんじゃないか? 特にガーネットは。あいつ、子供好きらしいからな」
「あまり嬉しくないです」
 そう冷たく言って、ギアボルトは去ろうとする。
「何だ、もう行くのか? もうちょっと話していけよ」
「これ以上、あなたと話す必要は無いと思いますが」
「そう言うな。これから一緒に戦う仲間なんだ。仲良くやろうぜ」
「…………仲間?」
 ギアボルトが振り返り、オルガの顔を見る。というか、睨んでいる。
「モビルスーツのパイロットだったって話したら、町長に頼まれてな。まあ、メシは美味いし、特に
断わる理由も無い。よろしく頼むぜ」
「…………」
 ギアボルトは返事をせず、オルガを睨みつける。常人ならば震え上がるほど冷たい視線を受
けても、オルガはニヤニヤ笑っていた。さすがだ。



 深夜。オルガたちのいる町から数キロほど離れた所にある小さなオアシス。泉の周りにはザフ
トの軍服を着た十数人の男たちが屯し、焚き火を囲んでいる。彼らを見下ろすようにそびえる
影。砂漠専用のジン・オーカーが三機と、バクゥが五機。
 彼らはかつて、この地域の攻略を任務としていたザフトの一部隊である。その中には、昼間、
ギアボルトたちを襲撃してきた者たちもいる。
「で、逃げてきたというわけか」
 隊長らしい男が、失敗した部下たちを睨む。部下たちは震え、言い訳しようとするが、
「言い訳するんじゃねえよ」
 と、先に封じ込まれた。
「ったく、あの小娘さえ始末すれば、あの町を落とすのは簡単だったのによ」
 隊長は悔しそうに言う。無理もない。この一ヶ月、七回も攻撃しているのに、あの町を落とす事
が出来ない。二十機以上あったモビルスーツも、半数以上が破壊された。
「隊長、もうあの町は放っておいた方がいいと思いますが……」
 部下が提案するが、隊長は眉を歪めて、
「バカ野郎! コーディネイターがナチュラル相手に尻尾巻けるか! それにあの町には、唸る
ほどの金がある。そいつを手土産にすれば、リ・ザフトも俺達を受け入れてくれる。宇宙に帰れ
るかもしれないんだぞ!」
 宇宙に帰れる。その言葉は、部下たちの心を揺さぶった。
 こんな砂漠で死にたくない。その思いだけが、彼らを支えていた。敗残兵、薄汚い盗賊という汚
名も甘んじて受け入れ、今日まで頑張ってきたのだ。
 これ以上、こんな所にいたくない。それは隊長も同じ気持ちだった。手持ちの物資も付きかけ
ている。時間が無い。隊長は覚悟を決めた。
「三日後、南の町を襲っている別働隊と合流する。俺たちが北、奴らが南から攻撃して、あの町
を落とす! 一気に決着をつけるぞ!」
「はっ!」
 隊長の指示に、男たちは敬礼で応えた。時代に取り残された者たちの反撃が始まる。



 宴会も終わり、人々は自宅に戻った。町長も眠りにつき、町は闇の静寂に包まれた。
 だが、眠りを拒む者もいた。自警団のモビルスーツ格納庫で動く人影。淡い照明の下で、一生
懸命に自分の機体を整備している。
「ふう」
 整備終了。ギアボルトは思いっきり背を伸ばし、飴を口に入れて、整備道具を片付けようとす
る。
「ギアボルト」
 突然の声。もっとも、彼女には声の主が誰なのか分かっていた。数分前にこの格納庫に入っ
て来たのも知っていたが、邪魔をする様ではなかったので、無視していた。
「ヒュロス、何か用ですか?」
 町長の息子は、自分の名前を呼んでくれた少女に近づく。
「こんな遅くまで、整備してるのか?」
「整備の人たちを信じていないわけじゃない。でも、自分の機体は自分でチェックしたいの。命を
預けているのだから」
 ギアボルトのその習性は、ゴールド・ゴースト時代に身についたものだった。整備も仕事の内だ
ったのだ。
「凄いな、君は。俺と年はそんなに変わらないのに、俺なんかより、ずっとしっかりしてる」
「そうですか?」
「ああ。でも、こんな夜遅くまで整備しなくても……」
「いいえ、今の内にやっておかないと、敵が来た時に対応できません。私の推測が正しければ、
数日中に敵は来ます。それも、最大級の」
「! なっ…」
「私個人を狙った襲撃が失敗した以上、敵は総力戦に打って出る可能性が極めて高い。ならば
今の内にやれる事をやっておかないと」
「て、敵が来るって、だったらみんなに報せないと!」
「あくまで私の勘です。本当に敵が来るとは限らない。それにもし、敵が来たとしても、私が何と
かします」
 そう言ってギアボルトは、自分の愛機を見る。
 TFA−2、ザウート。ジン以前に開発されたモビルスーツで、キャタピラを装備した戦車形態へ
の変形が可能。ジンを大きく上回る火力と装甲を誇るが、その重装甲ゆえに機体の総重量も半
端ではなく、機動性、運動性ともにジン以下となってしまった。その評価はザフト、連合共に低く、
バクゥの登場と共に前線から消えていった『欠陥機』。
 だが、この欠陥機をギアボルトは見事に使いこなした。装備されている銃火器類の照準を改良
し、火器の射程距離を大幅に伸ばして、スナイパーである彼女の力量を充分に発揮できるよう
にしたのだ。その結果、敵はこの町に近づくどころか、このザウートの姿さえ見る事が出来ず、
次々と破壊された。
「この町は必ず守ります。死に損ないの私を救い、今日まで世話をしてくれたこの町は必ず」
 決意を込めたその言葉に、ヒュロスは少し感動した。いや、感動している場合ではない。今夜、
ここに来たのは、彼女に伝えたい事があるからだ。ヒュロスは深呼吸をした後、
「な、なあ、ギアボルト。もし、いや、お前ならやれるだろうけど、敵を全部倒したら、その後はどう
するんだ?」
「えっ?」
 まったく予想していなかった問いに、ギアボルトが珍しく驚きの表情を見せる。
「お前、前に『私には行く場所も、帰る場所も無い』って言ってたじゃん。だから、その、もし良か
ったら、ずっとこの町にいてもいいんだぜ。いや、そうしてくれ。俺と一緒に…」
「………………」
 淡い恋心を秘めた少年の言葉は、ギアボルトの耳には届いてなかった。
 敵を倒したら、この町を守ったら、その後、私はどうすればいい? 何をすればいい?
「お前が傭兵をやっていたって事は、親父から聞いた。そりゃあ、あんまり褒められた事じゃない
けど、お前にも事情があったんだろう?」
 そうだ。そうしなければ、戦わなければ生きられなかったからだ。
「お前の過去なんて、俺は気にしない。大切なのは、今のお前だろ?」
 ヒュロスは本心からそう言った。温かい言葉だった。けれど、ギアボルトはその言葉に、少し妙
な感覚を受けた。なぜだろう? ヒュロスは正しい事を言っているのに。
「お前ら、こんな夜遅くに何やってるんだ?」
 突如現われた第三者の声が、ギアボルトの意識を現実に戻した。
「オ、オルガさん!」
 うろたえるヒュロス。その様子を見たオルガは、ニヤリと笑う。
「なるほどねえ。まあ、馬に蹴られて死にたくないし、ここは見てみぬ振りをするのがいいんだろ
うが、生憎、俺も自分の機体の整備をしたくてね。悪いが、ヒュロス君は出てってくれないか?」
「あ、は、はい。どうも、すいません」
 素直に出て行くヒュロス。ギアボルトも後に続くが、
「ちょっと待った。ギアボルト、お前さんには聞きたい事がある」
 と、オルガに引き止められた。
「……何でしょうか?」
「この辺りの地形、敵の情報、こちらの戦力、その他、これからの戦いについて必要な事を全部
教えろ。あまり時間も無いようだしな」
 オルガはニヤリと笑う。彼もまた、敵の襲来が近い事を感じているのだ。
「分かりました」
 ギアボルトは頷き、その場に残った。ヒュロスは心配そうに見ていたが、やがて帰っていった。
 ヒュロスが帰ったのを見て、オルガが機体の整備をしながら話しかける。ちなみに、彼の機体
もザウートだ。
「お前さあ、バカな事を考えてないか? この町を平和にしたら戦う理由が無くなる、とかさ」
「!」
 見抜かれている。
「……話を聞いていたのですか?」
「ああ。あのお坊ちゃんが面白い事をしそうだったから、つけてきた。で、ドンピシャだったわけ
だ」
「………………」
「しっかし、ホントにバカな事で悩んでるなあ。そんなの、考えたって仕方ないだろ。なるようにし
かならねえんだよ」
「それは、そうですけど……」
 でも、一度考えてしまうと、そう簡単には割り切れない。
 コーディネイターをも超える戦闘用強化人間として生み出された彼女にとって、戦う事が人生そ
のものだった。戦いの中で生きて、仲間と出会い、そして、死んだ。そして、死してなお、戦場に
身を置いている。戦わない自分など想像できないし、したくもなかった。それは自分の今までの
人生を全て、否定してしまう事だから。
 しかし、本当にそれでいいのだろうか? 戦う事以外にも、手にする事の出来る幸せが、人生
があるのではないだろうか?
「……ガーネット・バーネットが憎いです」
 突然、その名前を言ったギアボルトに、オルガは眼を丸くした。
「あの女に殺されかけてから、いえ、殺されてから、私は弱くなった。つまらない事に怯え、悩み、
苦しむようになった。今の私は、昔の私より遥かに弱くなっている。私を変えたあの女が憎い。
私を殺したあの女が許せない……!」
 口の中の飴を噛み砕く。こんな風に他人に憎悪をぶつける事も、昔の彼女ならあり得ない。常
に冷静沈着で、動揺も感情も見せる事無く、確実に敵を殺すマシーン。それが、かつてのギアボ
ルトだった。それが今では……。
「ぷっ……。くっ、あはははははははははははは!!!」
 格納庫に、オルガの笑い声が響き渡る。
 突然の激笑にギアボルトは驚く。だが、オルガは彼女をまったく気にする事無く、笑い続ける。
「はははははははは……、なるほど、そういう事か。分かったよ、お前さんがどうも気になる訳
が」
「えっ?」
「似てるんだよ、お前と俺たちは。戦う事しか知らないバカ野郎同士。いや、お前は女だから『野
郎』じゃないか? この場合は『女郎』って言うのか?」
「知りません。それより、どういう意味ですか? 私とあなたが似ているというのは……」
「ちょっと違う。俺とお前が、じゃなくて、俺たちとお前が、だ」
「?」
 首を傾げるギアボルト。
「まあ、俺は他人様にアドバイス出来るほど偉くないが、一つだけ言える事がある。自分の気持
ちに正直になれ。そうすりゃ、どんな結果になっても、割とすんなり受け入れられる」
「正直に……ですか」
 それが一番、難しいのだが。



 翌日からオルガは格納庫に閉じこもった。そして、自分に与えられたザウートの整備に専念し
た。
 一方、ギアボルトは悩んでいた。これまでの事、自分が生きている意味、そして、これからの
事、自分の未来について。
 時折、ヒュロスが訪ねてきたが、すぐに町長の秘書が連れ戻して行った。逃げるヒュロスと、追
いかける秘書。二人のせいで格納庫は騒がしかったが、気にも留めなかった。
 ヒュロスの言うとおり、この町に住むべきなのか。そうすれば、平和に暮らせるだろう。それは
決して間違った事ではない。
 だが、ヒュロスの言った一言が、妙に気になるのだ。
「お前の過去なんて、俺は気にしない。大切なのは、今のお前だろ?」
 今の自分。それは一体、どんな自分なのだろう? それに過去とは、そう簡単に捨てられるも
のだろうか? 現にギアボルトは恐れている。ガーネット・バーネットという名の過去を。絶対なる
死と恐怖の象徴を。
「私は、どうすれば良いんだろう……」
 悩んでいる間に、時間は流れた。



 オルガが町にやって来て、三日後の深夜。
 月の明るい夜だったのが幸いした。そして、この日の見張り役が、町で一番、眼がいい男だっ
たことも幸運だった。町の南から迫る敵モビルスーツ部隊を即座に発見し、報せたのだ。
 跳ね起きた町の人たちは、地下の大型シェルターに避難する。同時に自警団のモビルスーツ
が出撃。郊外で防衛線を張り、敵の襲来に備える。
 敵のモビルスーツは『砂漠の王者』とも呼ばれる獣型モビルスーツ、バクゥが七機。対する自
警団のモビルスーツは、ほとんどがジンやストライクダガーの砂漠戦仕様だった。OSをナチュラ
ル用に書き換えたものを町長が裏ルートで手に入れたのだが、性能はあまり期待できない。
 しかし、この町には彼女がいる。この町の守護女神、ギアボルトのザウートが前に出る。ジン
やストライクダガーの役目は、彼女のサポートだ。援護射撃をして、彼女のザウートの弾道を読
み難くする。または敵の遠距離攻撃から、身を挺してギアボルトを守る。この陣形こそ、ギアボ
ルトが自警団に入って以来、ずっとこの町を守り続けてきた不敗の陣形だった。
 だが、それは相手も先刻承知。南からの部隊はオトリで、隊長率いる本隊は北から攻撃を仕
掛ける。
「ようし、このまま全機、突撃! 図に乗っているナチュラルどもに、コーディネイターの力を思い
知らせてやれ!」
 隊長率いるバクゥ部隊が先頭に立ち、それに遅れてジン・オーカー三機が町に迫る。しかし、
ここで誤算が生じた。
「おらおらおらおらおら!」
 緑色に塗装されたオルガのザウートが、バクゥを次々と撃墜する。オルガの射撃はギアボルト
ほど狙いは正確ではないが、凄まじい弾幕で敵の動きを封じてしまう。そして、敵が止まったとこ
ろを確実に仕留める。この戦法によって、あっという間に二機のバクゥが破壊された。
「な、何だと!?」
 思わぬ伏兵の登場に、動揺する隊長。その間にも、後方のジン・オーカーが一機、コクピットを
打ち抜かれた。
「ぬうううう! ナチュラルの分際で、生意気な!」
 隊長は何とかかわすが、部下たちは次々とオルガの餌食となった。三分もしない内に隊長以
外の機体は全て撃墜されてしまった。南側から攻めているオトリ部隊に連絡を取るが、通じな
い。こちらも全員、やられたようだ。
「こ、こんなバカな……。この俺が、コーディネイターであるこの俺がナチュラル如きに、あんな旧
式のモビルスーツ如きに……」
 生まれて初めての屈辱。隊長の頭に血が上り、そして、
「貴様らああああああっ!」
 命を捨てた突撃。それはさながら、戦士の断末魔。
「上等だ、さっさと終わらせてやるよ!」
 引き金を引くオルガだが、ザウートからは弾が出ない。
「弾切れだと? こんな時に!」
 装弾数をチェックしなかったオルガのミスだ。隊長の乗るバクゥが、口のビームサーベルを光
らせて迫って来る。
「ヤバいっ!」
 オルガは即座に後退する。その動きは、鈍重なザウートとは思えないほど、素早い。不利を悟
ったオルガはそのまま後退する。
「ちいっ、逃がすか!」
 追う隊長機だが、オルガのザウートも速い。両機の距離は、どんどん開いていく。オルガはザ
ウートを徹底的に軽量化をして、通常のザウートを遥かに上回る機動性を与えた。もちろん、キ
ャタピラや動力も改造してある。たった三日の内によくもこれだけ、と感嘆するほどの出来であ
る。
 ついに隊長は、オルガのザウートを見失った。部下を全て失った上に、ザウート如きに逃げら
れるとは……。彼の怒りは頂点に達した。
「……もういい。もう金などどうでもいい! この町の連中を皆殺しにしてやる!」
 憎しみを晴らすべく、バクゥは無差別攻撃を開始した。背中のレールガンと口のビームサーベ
ルで建物を破壊し、町を瓦礫の山にする。住人は避難し終えたので人的被害は無いだろうが、
それでも無茶苦茶だ。
「まいったね、こりゃ。さて、どうしたものか……」
 暴れ回るバクゥを見て、オルガは少し考えた。そして、
「まあ、一宿一飯の恩は返したし、後は任せますか」
 と傍観を決め込んだ。
「それに、あいつにとっても、いい機会かもしれんしな。銃を捨てて普通の女として生きるのか、
それとも……」



 町の南での戦いは、ギアボルトの活躍によって、終結していた。誰もがホッと一息をついたそ
の時、悪魔が現われた。
「ごらあああああああっ!!」
 意味不明な雄叫びを上げて、隊長のバクゥが襲い掛かる。ジンもダガーも相手にならない。あ
っさり倒され、ギアボルトのザウートに迫る。
「……!」
 接近戦に持ち込まれたら、ザウートはバクゥには絶対に勝てない。唯一、勝てる方法は敵の射
程距離外にして、こちらの射程距離限界地点からの遠距離攻撃のみ。だが、バクゥは接近戦を
挑んできた。機体の性能、そして、接近戦を得意としないギアボルトの技量から考えても、勝機
は無い。
 死ぬ。
 殺される。
 そう思った瞬間、ギアボルトの体が震えだした。
 そして脳裏に浮かぶ、あの一瞬。かつて、ガーネットのストライクシャドウが放った大槍によっ
て乗機が貫かれ、爆発したあの一瞬。自分が死んだ時。
「あ……」
 嫌だ。
 あんな痛い思いも、あんな情けない自分になるのも、絶対嫌だ。
「あ、あ……」
 ならばどうする?
「う…」
 迫る敵機。結論は一つしかない。
 死ぬのが嫌ならば。
 怖い思いをしたくないのなら。
 生き長らえたいのなら。
 この体の震えを止めたいのなら。
「うわああああああああああっ!!!!」
 戦え!
 ただ、ひたすらに!



 夜が明けた。
 町の周囲には、襲撃者たちのモビルスーツが横たわっている。いずれも完全に破壊され、た
だのスクラップと化している。
 その中でも、町の南にある一機のバクゥは異様な最期を見せていた。隊長機らしいが、操縦
席が破壊されており、死体は検分できない。
 破壊したのは、ザウートの拳だった。いや、間違いではない。ザウートの『拳』だった。バクゥは
至近距離に近づき、ビームサーベルを振るった。だが、ギアボルトのザウートはこれをかわして
バクゥの懐に飛び込み、その鉄拳を叩き込んだのだ。
 両機のスピード差を考えれば、いくら至近距離とはいえ、バクゥがザウートの攻撃を、しかも拳
撃をかわせぬはずがない。だが、現実にザウートの拳はバクゥを貫き、この町を守ったのだ。ま
さに奇跡。
 シェルターから出てきた町の人たちは、この奇跡を見て、ギアボルトを称えようと、彼女の乗っ
ていたザウートに向かった。先頭を走るのは、もちろんヒュロスだ。ギアボルトを抱きしめ、感謝
したかった。
 だが、ザウートのコクピットに、ギアボルトの姿は無かった。
 そしてその後、彼らがギアボルトの姿を見る事は、二度と無かったのである。



 生命の気配無き砂の大地を、一人の少女が歩いている。その口の中には、極上級に甘い飴
が含まれている。
 行く当てなど無い。帰る場所も無い。
 これからの事を考えると、不安でたまらない。死神の鎌が振り下ろされるその瞬間を思い浮か
べると、体が震え、心が竦む。
 だが、少女は満足していた。
 あの時、バクゥを倒したあの瞬間、少女の心はざわめいた。
 勝利と生存を喜ぶ反面、更なる戦いを、更なる敵をもとめていた。
 そして、ヒュロスが言った「過去など気にするな」という言葉に、納得できなかった理由も分かっ
た。私の『過去』はまだ終わっていない。あの時、ガーネットに敗れ、生死の境をさまよった時か
ら、彼女の時間は止まっていた。過去を顧みる事も、未来を夢見る事も出来ない、ただの抜け
殻だった。
 それは今も変わらない。そして、このままでは永遠に変わらない。
 戦わなければならない。決着をつけなければならない。
 戦う事は怖い。死ぬのも嫌だ。けど、このまま立ち止まるのはもっと嫌だ。
 ならば戦おう。恐怖に震えながら、それでも、この命が尽きるまで。
 決意を固め、歩を進める少女の前に一台のジープが現れた。
「よお。どこへ行くんだ?」
 オルガは少女に話しかけた。少女は飴を噛み砕き、
「敵の所に」
 と答えた。今までで最高の笑顔を浮かべて。
「……ふん。本当によく似てるよ、お前。最悪の選択をしやがって。そんなところまで昔の俺たち
に似なくてもいいだろうが。ええ、ギアボルトさんよ?」
 オルガは少女を睨む。と、少女はオルガに頭を下げた。
「助けてくれて、ありがとうございました」
「……何の事だ?」
「私がバクゥに反撃しようとしたあの時、バクゥの動きが一瞬、遅くなった。そのおかげで私は勝
つ事が出来た。ありがとうございました」
 その通りだった。それこそが、通常ならば間に合わないはずのザウートの拳が当たった奇跡
の正体。ザウートに飛び掛ろうとしたバクゥが一瞬、空中で動きを止めた。それによってギアボ
ルトは勝利したのだ。
 奇跡の演出をしたのは、オルガだった。高速仕様に改造したザウートで素早く駆けつけ、バク
ゥの背後から銃撃したのだ。
「礼はいい。それより、これからどうするつもりだ?」
「ガーネット・バーネットを探します。そして、戦います」
 自分の恐怖の元凶。彼女と戦わない限り、ギアボルトは前に進めない。
「ほう。あの女と命の取り合いをするつもりか? やめとけ、死ぬぞ」
「それでも、私は行きます。そして、戦います」
 ギアボルトの決意は固い。そう察したオルガはジープの左ドアを開けた。
「乗れ。お前みたいな危ない女、野放しには出来ん。悪いが、しばらく俺と付き合ってもらうぞ」
「しばらくって、どれくらいですか?」
「どちらかが死ぬまでだ。退屈はさせないぜ」
 ギアボルトは答えなかったが、今、この場では余計な言葉は不要。沈黙こそが了承の証だっ
た。
「それじゃあ、行こうか、ギアボルト」
 ギアボルト。その名で呼ばれる事が、たまらなく嬉しかった。
 それは人間の名前ではない。戦士の名前であり、戦鬼の名前であり、戦い続ける人生を選ん
だ決意を現す名前。
「はい、行きましょう。戦場へ」
 二人を乗せたジープは、砂漠を走る。
「これも何かの縁だ。お前を鍛えてやる。ガーネット・バーネットにも負けないほどの凄腕にな」
 ジープのアクセルを踏みながら、オルガが言う。
「ありがとうございます。でも、いいのですか? 彼女はあなたの仲間では?」
「ああ。だが、あの絶対無敵女が負ける姿も見てみたい。まあ、一種のゲームみたいなものだ
な」
 オルガは楽しそうに笑う。まるで、お気に入りのオモチャを手に入れた子供のような笑顔だ。
 この男について行っていいものか、ギアボルトは一瞬迷ったが、ここは自分の運命を信じてみ
る事にした。
「分かりました。それでは、よろしくお願いします。先生」
「……先生? 何だ、そりゃ」
「先生は先生です。私を鍛えてくれるのでしょう? それなら、オルガさんは私の先生です。どう
ぞ、よろしくお願いします」
「……………」
 先生。そう呼ばれる事に、オルガは不思議と抵抗感は無かった。
『俺、前世は教師や弁護士だったのかな?』
 そして二人を乗せたジープは、砂塵の中に消えた。
 これが後に、世界中の兵士たちを震え上がらせる傭兵コンビ『カラミティ・ペア』誕生の瞬間で
あった。

(2004・2/7掲載)
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